応用編#07 超基本色
ファッション、インテリア、プロダクト、景観など各分野の色彩のデータを捉えていくと、時代が変わっても分野を越えて長年使われている色があることがわかります。これを超基本色と呼んでいます。
日本の気候・風土に合った色であって、他の国とは異なった日本独特の色でもあります。日本の生活分化の中で、伝統的に使いこなされてきた色であり、大変身近で、また使いやすい色と言えます。そのため、売りやすい色でもあります。そのような視点で商品づくりや空間づくりの際に活用されるとよいでしょう。
| 色名 | 特徴 | 展開分野 |
|---|---|---|
| アイボリー | 20世紀ではクリーム色に近い、やや彩度のある色も人気だったが、近年はオフホワイトに近いアイボリーというような仄かでソフトな色が使われている傾向がある。同じ色名でも、時代によって明度や彩度の調子が変化していくので、留意したい。 | ファッション、プロダクト、インテリア、建築、景観 |
| ベージュ | アイボリーに近いような明るめなトーンから、キャメルのような彩度の高いトーンなど、幅広く使われている。色相やトーンの変化はトレンドの影響もある。 色相ではYR(黄赤)系からY(黄)系に拡がりがあるため、ファッションでは個人の肌の色との調和を考える必要があり、アドバイスが効果的である。インテリアなど空間では赤みに寄せたり、黄みに寄せたりで表情が変わるので、腕の見せ所でもある。また、白木の色に類似であるため、 インテリア分野では、大変重要な色である。 |
ファッション、プロダクト、インテリア、建築、景観 |
| ブラウン | インテリアやエクステリアに木調の素材が使われるようになって、これまで以上に認知されてきている色である。皮革の基本色でもあり、靴などではポピュラーである。 木や皮革など素材そのもの色であるため、質感によって印象の良さが決定される傾向があるため、近年、建材分野で凹凸など表面仕上げでの工夫に目を見張るものがある。 |
ファッション、インテリア、建築、景観 |
| 白 | 白いTシャツだけの専門店があるくらい基本中の基本の色。 インテリアでも、白い壁紙だけのカタログで10センチ以上になるほどである。 アイボリーに近いような色みのある白や、青みの白などバリエーションが豊富で、こだわりの白に注目が集まったりするところも基本中の基本の証。 光沢のある白で非常にモダンな表情を表現した店舗など、表面仕上げによって多様なイメージになる。 ベースの色としてもアクセントの色としても活用範囲の広い色である。 |
ファッション、プロダクト、インテリア、建築、コミュニケーション |
| グレー | ここでは代表例として、ミディアムグレーに近い色を提示しているが、トレンドや分野によってライトグレーやダークグレーが相応しい場合がある。 シルバーなどメタリックな素材も含めて考えたい。 昭和時代には、ねずみ色のスーツというとファッションセンスの低い、個性がみられない着こなしの例として挙げられていたが、近年レディスファッションの最先端のスタイリングでも使われる傾向が強まっているようである。 |
ファッション、プロダクト、インテリア、建築、景観、コミュニケーション |
| 黒 | 1970年代にプロ仕様の色としてプロダクト分野で人気を博し、一世を風靡したブラック。1980年代には、デザイナーズブランドのファッショナブルなカラーとして一躍注目された。そんな憧れの色であったが、現在では、すっかり定着した基本色と言えそうである。 建築分野では、光沢のある黒い素材を用いてモダンさを、黒い石材を用いて重厚感などを表現したり、インテリア分野では指紋のつかない黒い素材が開発されたりしてきた。 |
ファッション、プロダクト、インテリア、建築、コミュニケーション |
| 赤 | 古墳の壁画の時代から使われてきた赤。その力は衰えていない。 ファッション分野では、トレンドによって増減はするが、スポーツ、アウトドア、自動車などの分野では定着した人気を誇る色。メンズの色といってもよいくらいである。 また企業のコーポレートカラーとしては重要な色。 |
ファッション、プロダクト、インテリア、コミュニケーション |
| 紺 | 日本では古くから藍染めの伝統もあり、ジャパンブルーとして世界でも認知されている。学生服としても長年使われてきた色であるだけに、非常に身近な色と言えよう。 デニム素材の色としても、日常的に親しまれ、ファッションカラーとしても近年見直されてきた色。 暖簾の色として、商業施設でも改めて活用されている。 老若男女誰でも使える色として根強い人気がある。 |
ファッション、プロダクト、インテリア、コミュニケーション |
この他、プロダクト分野、メンズ分野ではブルーも定着した色であるが、空間や日用品では使われている割合がやや低いので取り上げていません。
分野によって重要なカラーについて、それぞれデータを基に考えていく必要があるでしょう。
2019年05月29日
Text by 日本カラーデザイン研究所