統合レポート2025 artienceグループの強み:独自のコア技術によるビジネス展開

2025年6月27日 公開

本ページはAIを用いて翻訳しています。

独自の分散技術を活かし、顧客との次世代開発を本格化
リチウムイオン電池正極材用導電CNT分散体事業

電気自動車(EV)に不可欠なリチウムイオン電池(LiB)で、高容量化・高出力化を支えるのが正極材用導電CNT(カーボンナノチューブ)分散体です。artienceグループではこれを戦略的重点事業と位置付け、国内外の4極5拠点で生産体制を確立し、新規顧客の開拓と新規技術の開発を加速させています。

トーヨーカラー株式会社 機能材料営業部 部長 小畑 晃司
トーヨーカラー株式会社 機能材料営業部 部長 
小畑 晃司

市場環境

EV市場の中長期的な成長トレンド

CO2排出削減に向けて各国での環境規制が強まるなか、自動車業界ではEV化に向けた大きな潮流があります。artienceグループでは、2019年よりEV向けLiB電極用としてCNT分散体の事業を本格化させてきました。CNTは、これまでLiBの導電助剤として多く用いられてきたカーボンブラックよりも導電性が高く、EVの航続距離や充電性能に影響を与えるLiBの高容量化や高出力化、長寿命化に貢献できる材料として注目されています。

足元の2024年度は、各国の政策変更やインフレ、金利上昇などを背景にEV市場全体が伸び悩み、逆風の1年となりました。米国では既存の主要顧客への出荷が低調でした。中国では、EVやプラグインハイブリッド車の販売台数は前年比で大きく伸びたものの、日系・欧州系ブランド車の売れ行きが芳しくなく、主に欧州車を扱うLiBメーカーからの受注量が伸び悩みました。

売上高推移と見通し・目標(2024年11月時点)

売上高推移と見通し・目標(2024年11月時点)
売上高推移と見通し・目標(2024年11月時点)

進捗状況

内定顧客社数も順調に増加

こうした状況を受け、中期経営計画「artience2027」で掲げた売上高と市場シェアの目標を、2年後ろ倒しすることにしました。

その一方で、中国・珠海では本格生産をスタートさせたほか、米国・ケンタッキー州とハンガリーの拠点でも量産に向けた生産能力を拡充するなどの進捗がありました。また、当社製品の採用を内定した顧客社数も、2023年の7社から2024年には10社に増加しています。一時的な市場の停滞は見られるものの、中長期的な成長トレンドにあることは変わらず、引き続き戦略的重点事業として取り組みを強化していきます。

当事業に関する投資計画の累計(2019年度~)

当事業に関する投資計画の累計(2019年度~)
当事業に関する投資計画の累計(2019年度~)

競争優位性

4極5拠点でのグローバルな量産体制

我々のLiB用CNT分散体は、もともとは印刷インキの顔料を均一に混ぜ合わせる分散技術を出発点としています。100年以上にわたり蓄積してきたこのコア技術を土台に、束状のCNTをダメージを与えずに1本1本ほぐし、ナノレベルで分散させることで、CNTの導電性能を最大限引き出しています。分散剤も独自に開発し、改良を重ねてきました。さらに、CNTの繊維の長さの制御など、お客様の要求仕様に合わせてカスタマイズできる生産プロセスが我々の強みとなっています。

また、CNT分散体は車載用LiBに使用されますので、品質要求が厳格です。我々はお客様との徹底したすり合わせをもとに、安全性の担保された製品を設計し、厳格な品質管理体制のもと日々生産活動を行っています。車載用LiBに関しては、ハイブリッド用途での製品化から10年以上経過しており、市場での信頼も獲得できていると自負しています。

主要市場である欧州・米国・中国・日本では、現地で安定した調達・生産ができるよう供給体制を整備しており、実績をもとにしたお客様との信頼関係・ネットワークも強固です。昨今の不安定な政治情勢のなかで、早期に現地供給できる体制を築けたことは、大きなメリットになります。また、他社による新規の参入を牽制するため、グローバルでの特許網の構築も進めており、競争優位性の確保につながっていると考えています。

artienceグループの優位性
  • CNTの性能を最大限に引き出す分散技術
  • 厳格な品質管理体制
  • 4極5拠点の量産体制の確立
4極5拠点の生産体制
次世代ニーズを捉えた製品開発と投資最適化

2032年度までに、LiB用CNT分散体の世界シェア20%(車載用LiB容量の総需要に占める割合)という目標を掲げ、EVの多様化やそれに合わせたLiBの変化に先んじて対応していきます。これまでの高容量・高性能を追求する三元系向け導電助剤に加え、コスト重視のニーズにも応えるため、低価格なLFP(リン酸鉄リチウム)電池などに対応する製品も検討を進めています。一方で、全固体電池のような次世代ハイエンドも意識しながら、多様なニーズに応えられる開発体制を構築することが重要です。

顧客数の拡大は事業成長の要となります。お客様が増えればより多くの情報が得られるようになり、市場の動向をより正確に把握して、事業戦略に反映させることができます。また、実績を積み上げることで新たなお客様への横展開もしやすくなります。

供給能力を高めるための積極投資を継続していきますが、時期や投資額は常に見直しし、最適化を図っています。この事業は、投資判断から設備導入、量産開始までには2年~2年半を要するため、長期的な視点が欠かせません。お客様や部材メーカーとの密な情報共有のもと、市場ニーズを事業計画に落とし込み、必要なアクションを起こしていきます。

長期のありたい姿

カーボンニュートラル実現に向けた課題解決に挑戦

カーボンニュートラル実現を目指す大きな流れは強まっており、EV普及への社会的要請は今後も揺るぎないと考えています。充電電力の発電方法やLiBのライフサイクルCO2は注意深く見守っていく必要がありますが、自動車業界が脱炭素に向けて歩んでいくうえで、EV化が必須要素であることは何ら変わりません。我々が注力すべきは、LiB用CNT分散体の提供を通じて、EV普及の課題となっている価格、航続距離、充電時間の改善に寄与することです。それによってEVを選ぶ消費者の背中を後押しし、カーボンニュートラルの実現に貢献できれば、artienceグループのマテリアリティである“製品・サービスを通じた「感性に響く価値」の提供”にもつながると考えています。

統合レポート

リチウムイオン電池用材料