統合レポート2026 対談:企業価値向上を実現するartienceの変革ストーリーとは

2026年6月30日 公開

本ページはAIを用いて翻訳しています。

グループCEO髙島悟 × 竹ケ原啓介氏
企業価値の最大化に向けて、徹底した変革に取り組んでいるartienceグループ。一連の取り組みは、投資家からはどのように評価されているのか。また、この変革の意義をいかに資本市場へ伝えていくべきか。日本におけるサステナブルファイナンスの第一人者である竹ケ原啓介氏を本社に招き、髙島悟グループCEOとの対談を行いました。
写真左から グループCEO 髙島 悟、政策研究大学院大学 教授 竹ケ原 啓介氏
写真左から グループCEO 髙島 悟、政策研究大学院大学 教授 竹ケ原 啓介氏
竹ケ原啓介氏プロフィール:
サステナブルファイナンスと環境政策を専門とする研究者・実務家。 日本政策投資銀行で環境格付融資などを主導し、環境・CSR部長、産業調査部長、執行役員、設備投資研究所長などを経て現職。政府委員会の座長等を多数務め、GXやESG金融の制度設計に関与。日本企業の社外取締役も務める。

生業を変える覚悟で挑む事業ポートフォリオの変革

髙島 私たちが進める変革の出発点となったのは強い危機感でした。私が2020年に社長に就任した当時はコロナ禍の最中で、業績は低迷し、主力製品の成長も鈍化していました。このままでは企業としての持続性すら危うく、自社の製品や事業が本当に社会から必要とされているのかを根本から問い直し、事業ポートフォリオを転換していく必要があると判断しました。いわば「生業を変える」挑戦でした。

竹ケ原 そのなかで社名もartienceに変更されたとのこと。老舗企業が100年以上続いてきた社名の変更にまで踏み込んだという事実は重く、覚悟を感じました。

髙島 これまでの歩みを振り返ると、変革はまだ「道半ば」と認識しています。足元では、成長の柱としていたLiB用CNT分散体事業がEV市場の減速の影響を受けて計画の見直しを余儀なくされ、結果としてROEなどの経営指標はまだ目標水準に届いていません。ただ一方で、もう一つの柱である半導体・エレクトロニクス分野では着実な成果が見えてきました。海外を中心にリキッドインキや粘着剤などの既存事業も伸び、2025年度には営業利益が過去最高になるなど、一定の手応えは感じています。

竹ケ原 変革の軸に事業ポートフォリオの転換を据えている点は非常に理にかなっています。長期投資家が重視するのは、メガトレンドを踏まえた将来の社会像や、そこで自社が狙うポジションが明確になっているかどうか。そのうえで、バックキャストとフォアキャストの両面から成長の道筋が示されているかが問われます。こうしたストーリーの解像度が高い企業ほど、将来の成長力も評価されます。

髙島 私も、同じように認識しています。メガトレンドという観点では、当社にとって重要な鍵となるのは、AIを中心とするテクノロジーの進化や、気候変動の問題だと考えています。加えて、地政学リスクの高まりやインフレの進行、日本の人口減少といった構造的な変化も見逃せません。これらを一過性のものではなく、将来にわたって続く事業環境として捉えたうえで、ビジネスを構築する前提としています。

事業成長と社会的価値の創出を重ねる

竹ケ原 御社が描かれているように、長期視点では化石燃料に依存しないEVは確実に普及していくのだと思います。その前提に立ち、インキ事業で培った分散技術を応用し、CNT分散体でLiB市場を狙う戦略は、外部から見ても理解しやすい。対して、もう一つの柱とされる半導体・エレクトロニクスについては、具体的な姿がやや見えにくい印象もありますが。

髙島 これは、AI・テクノロジーの進展を支える挑戦と位置付けています。AIモデルそのものではなく、インフラ・チップといった周辺領域で、当社は化学メーカーとしての強みを発揮できると考えています。例えばデータセンターの電力消費や熱問題、半導体の微細化に伴う材料課題には、当社のポリマー技術が貢献できます。また、データ収集の入口となるカメラセンサーに用いられるカラーフィルタ用色素などの光半導体材料も、当社が長年取り組んできた分野です。

竹ケ原 なるほど、よく理解できました。生成AIの進展によって電力需要が大きく増えるなか、その効率化に資する材料技術を提供するというのは、サステナビリティと長期的な社会像が一致する領域ですね。

髙島 既存事業でも同様に、環境対応は重要なテーマです。当社の製品は、パッケージ印刷用のインキやラベル用粘着剤など生活に密着したものが多く、こうした分野でいかに環境負荷を低減していくかが問われています。今後の市場拡大を進めていくうえで、ブランドオーナーに対して環境配慮型・資源循環型の提案を強めていく方針です。

竹ケ原 成長市場を捉えながらサーキュラリティの担い手としての役割も果たすというのは、事業成長と社会的価値の創出が重なる構図であり、投資家からの評価にもつながりやすい点だと思います。

髙島悟

髙島 最近、一部で反ESGのような動きも見られますが、各国を巡っているとヨーロッパなどでは依然、環境意識の高さを実感します。現地の若手社員からは「artienceグループは環境に真剣に取り組んでいるから入社した」という声を聴くことも多く、会社選びの前提にもなっているのです。今後こうした世代が社会の中心になっていくことを考えれば、環境対応は単なるコストではなく、いずれはプレミアムとして評価される時代になるのでしょう。

竹ケ原 まったくその通りです。すでにEUではデジタル製品パスポートの導入が進むように、製品の素材や環境負荷が可視化され、それによって選別される時代になりつつあります。こうした流れに適合できない企業は、市場から排除される可能性もあるということです。ESG投資についても、経済合理性が低いといった見方をされることがありますが、大きな誤解です。そもそもESG投資とは社会正義のためではなく、設定した将来の事業モデルに向けて、社会課題の解決と成長を同期できる、長期的に「稼ぐ力」を持つ企業を見極めるためのもの。不確実な環境でも持続的に成長できる企業を選ぶという考え方に基づいています。

不確実な時代にこそ活きる24ヵ国の拠点ネットワーク

髙島 日本で人口減少が進むなか、グローバルで事業をどう展開していくかは一層重要になっていると感じています。世界的にコストプッシュ型のインフレが続く不透明感はありますが、いずれ環境が落ち着いた後を見据えると、今は積極的に投資していくべき局面だと見ています。振り返れば、コロナ禍においても海外投資を緩めなかったことが、現在の成長の土台になっています。

竹ケ原 御社の場合、グローバル展開と事業ポートフォリオの変革が一体で進んできた点は特徴的です。国内では祖業の印刷インキなどで構造改革を進める一方、生活関連材料で需要が伸びる新興国を早くから押さえ、成長市場を取り込んできました。その結果として海外売上高比率は50%を超え、現在の事業基盤が形成されているのだと思います。

髙島 さらに現在、重要度を増しているのが分散の考え方です。地政学リスクが高まるなか、イラン情勢の緊迫化もあり、原材料の確保は大きな課題となっています。ただ、当社は24カ国に拠点ネットワークを持っており、調達先の切り替えなどを通じて供給を維持できます。これまで築いてきた体制が活きていると感じています。

竹ケ原 複数地域で築いてきた事業インフラが、結果として強靭なサプライチェーンとして機能しているということですね。不確実性に対応できる企業の優位性がよく表れています。

髙島 現在は迅速な判断が求められる状況ですので、「現場判断を優先すること」「情報共有を徹底すること」という2つを軸に対応に当たっています。また、中国についても、米中関係などの緊張はありますが、すでに現地に開発拠点を持つことを強みに、着実にビジネス機会を捉えていきます。複雑な国際情勢にあるからこそ、企業人が国境を越えて経済的なつながりを深めることの意味は重いのだと思っています。

事業戦略と一体化した人材ポートフォリオを構築

髙島 すべてを変えるという覚悟で変革に臨むなかでも、唯一変えていないのが「人間尊重の経営」という経営哲学です。私は「個があって全体がある」と繰り返し伝えてきました。不確実性の高い時代だからこそ、社員の多様性を活かし、それぞれの違いを力に変えていくことが組織の競争力になります。そうした観点から、人材教育への投資や人事制度の見直しを進め、挑戦を促す風土づくりに取り組んでいます。

竹ケ原 トップが示す方向性のもと、個々が多様な形で貢献し、それが組織の力になるという考え方は、今の時代にとても合っています。反面、人的投資は財務上は費用として捉えられるため、それが将来の事業ポートフォリオを支える投資であることを、どのように示すかが肝となります。

髙島 人的資本についても、事業戦略との紐づけが一層問われているということだと思います。極めて大切で、当社としてもまさに強く意識している点です。

竹ケ原 御社はすでに自社の将来像を持ち、事業ポートフォリオの変革を進めています。その場合、それを支える人材ポートフォリオが存在するはずです。どのような人材がどの程度必要なのか、現状とのギャップをどう埋めるのか。リスキリングや採用、知見の形式知化などを通じて、人的資本が企業価値に転換されていくプロセスを外に向けて明示していくことが期待されています。

髙島 おっしゃる通りだと思います。例えば、海外展開を強めるうえで、グローバル人材の採用・育成には特に注力しています。2026年2月には、インドのバンガロールに日本企業初となるR&Dセンターを開設しましたが、これは開発拠点の確保とともに、現地の優秀な人材獲得を狙ったものです。実際、ここを起点に今年度はインド出身の新入社員3名を迎えており、彼らの活躍を促すことで海外における自走的R&Dを強化していく考えです。

竹ケ原 人材ポートフォリオ改革とグローバル強化を一体化して進めている点は、御社の強みとして強調すべきです。

髙島 もう一つ象徴的なのが、会社全体のAIリテラシーを底上げするため、その核人材を育てる「生成AI活用推進タスクフォース」の取り組みです。実際に始めてみると、主体的に手を挙げ活動する社員が次々現れており、各部門での成果が見え始めています。製品開発においても、AI活用による新たな価値創出が進んできました。

竹ケ原 御社が長年蓄積してきた職人技のような技術・知見をデータベース化し、AIを取り入れた全社活用が進んでいると伺いました。「art」と「science」の融合という考え方とも親和性が高いですし、過去の知財が確実に今後の企業価値に転換されていくプロセスとして大いに評価できます。

成長戦略を資本市場にいかに伝えるか

竹ケ原 これまでお話を伺ってきて、投資家が求めるストーリーの要素はすでに揃っていると感じます。一方で、それらが一つの流れとして十分に伝わりきっていないように見受けられます。将来どのような社会を見据え、そのなかで御社がどのような役割を担うのか。なぜその事業ポートフォリオへ転換していくのか。それを支える人的資本をどう変えていくのか――こうした因果関係を一つのストーリーとして示すことで、理解は一段と深まるはずです。

髙島 非常に参考になります。今後は欧州など海外でもIRを強化していく予定ですが、現地のパートナーからもまさに同じ指摘を受けています。

竹ケ原 特に、サステナビリティが成長戦略そのものであるという点は、ぜひ社長の言葉として発信していただきたいです。御社は、環境対応やサーキュラリティが事業ポートフォリオと強く結びついていますが、現状ではそこが伝わりづらく、マテリアリティとして見える化することも一つの方向性だと思います。

髙島 非財務面ではどのような情報開示が求められるでしょうか。

竹ケ原 事業と一体で示していくことがまず重要です。近年は「非財務」というより、将来の企業価値につながる「未財務」情報を開示するという考え方にシフトしています。人的資本や脱炭素対応、技術力、グローバル展開といった要素が、成長戦略にどう影響していくかという視点で情報を整理することをお勧めします。また、ガバナンスの実効性を示すものとして、社外取締役との議論のプロセスなども積極的に可視化していくべきでしょう。

髙島 資本市場との対話については、頻度を四半期ごとに増やし、事業理解を深めていただくための事業説明会も実施するなど強化を図ってきました。ご指摘いただいた点も踏まえ、今後も取り組みを継続していきたいと思います。

変革を成果につなげる次の成長シナリオ

髙島 経営計画artience2027/2030 “GROWTH”では、ROE10%の達成を掲げています。ただし、これは現状の事業構造のままでは容易ではない水準です。現在は2027年度からの次期中期経営計画の議論を進めており、営業利益をどう引き上げるか、そのための成長シナリオをいかに描くかが大きなテーマとなっています。

竹ケ原 先ほどのお話を伺って、半導体分野が今後の成長ドライバーとなる可能性を強く感じました。EV分野も中長期では成長が見込まれており、ROE10%は確かに高い目標ですが、達成に向けた材料は揃いつつあるのではないでしょうか。昨年度は一時的にROEが低下したものの、この数年で着実に改善し、変革の成果が財務面にも表れてきているようにお見受けします。ROE向上の基盤として、ROIC経営も導入されていますね。

髙島 資本効率については、ROICやCCCといった指標を取り入れてきました。現状では、ROICは品種ごとに管理しています。分子である営業利益は大きく変わっていませんが、分母となる固定資産や在庫といった資本の使い方を月次でモニタリングする仕組みを整えてきました。資本コストはおおよそ8%を目安に想定しています。

竹ケ原 啓介氏

竹ケ原 資本コストを明確に意識した経営を実践されているのは大切な点です。改善の方向性が見えてくれば、次はPERの評価に移っていきます。最終的にはマーケットの期待値の問題であり、先ほどから申し上げているストーリーの伝え方に大きく関わってきます。社名変更から事業ポートフォリオの転換、人的資本投資までが一つの流れとして伝わり、直近の特殊要因を除けばROEも改善しているとなれば、評価は自然と高まります。結果としてPBRが1倍を超えていくという展望は、十分に描けるのではないでしょうか。

髙島 ストーリーの発信については、非常に貴重な示唆をいただいたと感じています。GROWTH(成長)を目指した挑戦をしっかりと重ねながら、企業価値の最大化を目指してまいります。本日はありがとうございました。

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