統合レポート2026 トップメッセージ

2026年6月30日 公開

本ページはAIを用いて翻訳しています。

代表取締役社長 グループCEO 髙島 悟
代表取締役社長 グループCEO
髙島 悟
不確実性の時代に挑み「感性に響く価値」の創出を続け成長への変革を完遂します。

激動する世界で問われる企業の姿勢

2025年度を振り返り、そして2026年度以降を見通したとき、当社を取り巻く環境変化の激しさを改めて実感しています。地政学リスクの高まりに加え、AIを中心とするテクノロジーの進化や、国内における消費人口・労働人口の減少、さらには環境・社会などサステナビリティをめぐる新たな課題など、事業環境は大きく揺れ動いています。これらはいずれも一過性のものではなく、今後も続くことを前提に経営を考えていく必要があります。
なかでも昨今の中東地域を取り巻く地政学リスクは予断を許さない状況です。2026年2月末にイランで武力衝突が起きた直後に、経営幹部が集まり対応を協議しました。その際の確認として、緊急事態に匹敵することが起きていることを前提として「現場判断に委ねること」と「情報共有を徹底すること」を申し合わせました。各社・各部門が世界中の拠点から集まる情報を共有し、それぞれの現場判断で最善の手を講じてきました。3月から4月にかけては、特に原材料確保が最大の課題でしたが、供給メーカーや商社との調整やグループの海外拠点からの緊急輸入などを現場判断で行い、製品供給面でお客様に支障をきたすことなく乗り切ってきました。その後、入手できる原材料をベースとした製品変更や価格改定など、お客様からのご理解、ご協力をいただきながら、業績の維持向上に取り組んでいます。これまでのコロナ禍やウクライナ情勢などの環境変化に対応するために進めてきた体制改革や企業変革を通じて、当社には迅速かつ的確なレジリエンス力が着実に付いてきていると感じています。

当社には世界の多様な国と地域で事業インフラを構築しているという強みがあります。グローバルネットワークで情報を共有し、お客様の不安を取り除くべく誠実に対応する。関係部門が連携し、最善を尽くす。仕組みの改革・変革に加えて、こうしたマインドセットも徹底することで、試練を将来のチャンスへと変えていきます。
緊張が続く米中関係については、当社にとってはどちらも重要な市場であり、両国での事業を維持·拡大しつつ、インドなどほかの成長地域へのリスク分散が求められる難しい局面を迎えています。渋沢栄一翁は後に『訓言集』としてまとめられた多くの言葉のなかで、「彼我経済上の親善は、やがて政治上の親善となって、国際間の平和が保護されるのである」と述べており、私もこれに強く共感しています。企業の役割の一つは「平和をつくること」にあると考えます。企業人は現地に足を運び、直接人と向き合うことで、偏見を越えて親善を深めることができます。国際的な緊張が高まる局面においても、経済的なつながりを維持し、相互理解を深めていくことが、分断を防ぐ力になると信じています。

中期経営計画artience2027
「 稼ぐ力」を着実に高めた2年目

2025年度は、2030年をゴールとした経営計画artience2027/2030“GROWTH”の2年目でした。成長に向けた事業ポートフォリオの変革を進めるなか、売上高は前年度を若干下回ったものの、為替の影響を除けば実質的には増収でした。営業利益は過去最高を更新し、全体としての「稼ぐ力」は着実に高まってきています。

中期経営計画artience2027において、成長戦略を支える基本方針の1つ目が「高収益既存事業群への変革」です。既存事業を伸ばすべきものと再構築すべきものに分けて取り組んだ結果、安定した利益成長を遂げてきました。海外で粘着剤やリキッドインキが拡大したほか、国内においてもリキッドインキが安定的に収益を確保、構造改革を進めてきた顔料でも収益を改善しており、確かな手応えを感じています。

基本方針の2つ目「戦略的重点事業群の創出」では、「モビリティ・バッテリー」と「ディスプレイ・先端エレクトロニクス」を柱として取り組んできました。このうちモビリティ・バッテリー領域では、リチウムイオン電池(LiB)向けCNT分散体事業がEV市況の低迷の影響を受けました。米国ケンタッキー州とハンガリーの工場で大きな減損損失を計上することとなり、最終利益は減益となりました。主要なお客様の投資計画の見直しや延期が相次ぐなど、業界全体の変化を踏まえ、当社としても計画の見直しが妥当と判断しました。公認会計士とも慎重に議論を重ねたうえで、会計上に適切に反映させています。
一方、半導体を中心とするディスプレイ・先端エレクトロニクス領域では、複数のテーマが立ち上がり、確かな成長の芽が育ってきました。ディスプレイを固定する光学用粘着剤が中国などで伸長しているほか、スマートフォンや車載カメラなどに使われるイメージセンサー市場で、当社のカラーフィルタ材料が存在感を高めています。さらに、米国を中心としたデータセンターの建設ラッシュを背景に、回路基板用のポリマーの採用が進んでおり、今後のさらなる成長を見込んでいます。

成長投資を強め、事業ポートフォリオの変革を貫く

日本が30年続いたデフレから脱却し、インフレの時代へと移行したことは、企業経営における大きな転換点だと捉えています。資金を留めておくこと自体がリスクとなる環境下では、成長に向けた投資をいかに迅速・的確に進めるか、そのスピードが数年後の命運を分けることとなります。
こうした認識のもと、経営計画artience2027/2030“GROWTH”の達成に向けては、キャッシュフローの配分で成長投資を最優先に位置付けます。株主還元もまた重要な責務ですが、まずは将来への成長を確実なものとしていく方針です。

投資対象としては、既存事業の強化に加え、前述の先端エレクトロニクス領域を重視しています。これは、2027年度から始まる次期中期経営計画artience2030においても重要な成長ドライバーになると考えており、必要に応じてM&Aも含めた積極的な展開を図ります。

その一方、CNT分散体事業についても決して後退させるものではありません。EV市場は足元で調整局面にあるものの、自動運転をはじめモビリティの進化が著しいなか、デジタル技術との親和性からも電動化の流れは確実に進むと見ています。EV市場の拡大タイミングを見極めながら、当社としては負極材や全固体電池にも領域を拡大していきます。用途も車載用に留まらず、データセンター向けの定置型蓄電池や、今後進展が見込まれるフィジカルAIの駆動用電源などへと拡げ、成長の柱として育てていきます。

もう一つ、次世代領域として大きな可能性を感じているのが、「バイオ・ライフサイエンス」です。当社のポリマー技術や蛍光材料の強みを活かし、体外診断薬の分野を狙っていきます。従来の検査薬では動物由来原料が多く使われてきましたが、供給や品質の安定性には課題があり、化学製品への置き換えニーズは高まっています。2025年7月には、抗体メーカー(免疫生物研究所)と事業提携し、その連携のもと、当社の合成ポリマーを採用した検査薬の販売も始まりました。また、米国のバイオベンチャー(VLPセラピューティクス)への出資・技術者派遣を通じたワクチン開発でも、成果が見え始めています。次期中期経営計画では、この分野への取り組みに一層注力すべく検討を深めています。

そしてまた、収益性が低い事業に対する意思決定のスピードも高めていかなければなりません。一定期間キャッシュフローが改善しない事業に対してはリカバリープランの策定を求め、見通しが立たない場合には撤退も含めた判断が求められます。そうしたルールの整備を進め、事業ポートフォリオの変革を加速させていきます。

資本効率向上を徹底し、経営管理を高度化

資本効率の向上は、経営における最優先事項の一つです。中期経営計画artience2027で掲げたROE8%の達成は、PBR1倍超を目指すうえで最低限クリアすべき水準であると認識しています。2025年度は減損損失計上の影響によりROEは未達となりましたが、キャッシュフロー自体に問題はなく、artience2027の最終年度となる2026年度には目標を確実に達成していきます。

その実現に向け、グループの管理体制をさらに強化します。これまでは売上高と営業利益を中心にした進捗・業績管理を行ってきましたが、今後はここに新たに当期純利益を加えます。財務部門が毎月作成するレポートにも当期純利益を反映し、継続的にモニタリングすることで、ボトムラインを強く意識した経営へとシフトしていきます。

資本効率の指標としては、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)とROIC(投下資本利益率)の活用を徹底しています。ROICについては、セグメント単位だけでなく、より細かく品種ごとに目標を設定し、毎月の進捗を確認しています。

さらに、2026年度からは役員報酬の業績連動性をこれまで以上に高めました。従来の売上や営業利益に加え、ROEを指標に組み込むとともに、業績に応じた報酬の変動幅そのものも拡大させています。これにより、株主のみなさまと一層同じ目線から経営責任を果たしていきます。

「人間尊重の経営」のもと、個の力を高める

artience2027の基本方針の3つ目は「経営基盤の変革」であり、人的資本戦略はその中核となるものです。会社のすべてを変える覚悟で変革に取り組むなかにあっても、「人間尊重の経営」という経営哲学だけは不変としています。企業成長の本質は、多様な人材一人ひとりの能力を最大化することにあると考えているからです。

注力分野であるDXにおいても、外部の専門人材の獲得のみに頼るのではなく、社内人材が育つ環境づくりに力を入れています。その象徴が、生産・営業・間接部門を横断した「生成AIタスクフォース」です。強い関心を持って自ら学び、現場を変えていく人材がすでに次々と現れており、心強く思っています。さらにR&D部門でも、AIを活用した製品開発が進展し、AIエージェント開発への挑戦も始まっています。

挑戦する組織風土づくりと、新規事業の創出を使命とするインキュベーションセンターの取り組みにも、成果が表れてきました。同センターが主導する社内ビジネスアイディアコンテスト「IPPO(「まずは勇気を持って一歩踏み出そう」に由来する名称)」は、回を重ねるごとに応募者が増加。応募者の年齢も20代から60代と幅広く、外部コンサルティングが伴走して事業性や収益モデルを徹底的に磨き上げるというプロセスを通じて、人材育成と新規事業創出を両立させています。2024年度にグランプリを受賞した「省エネ推進ソリューション」はすでに事業化フェーズに入りました。電力センサー技術を持つ大学発ベンチャーとの連携のもと、工場での電力使用状況をAIでリモート管理し、省エネルギー化を提案するコンサルティング事業への発展が期待されています。さらに2025年10月には、素材分野に特化したグローバル共創拠点「Incubation CANVAS TOKYO」を開設し、人と技術、アイデアが交わる場として新たな価値創出を加速させています。

社員との対話を通じたエンゲージメント向上にも力を入れてきました。これまで国内外29拠点をまわり、合計約300名の社員と座談会を重ねてきました。1回あたり数名程度まで人数を絞ることで、個の意見をしっかりと引き出すことを重視しています。特に2026年度は製造現場を優先し、エンゲージメントサーベイの結果も踏まえながら、拠点ごとの課題に応じた議論を行っています。

こうした直接対話は、私自身の経営判断にも大きな影響を与えています。ある工場で挙がったのは「設備の老朽化が進んでいるものの、更新申請がなかなか通らず困っている」という声でした。大きな成長投資を進める一方、既存施設への必要な投資が行き届いていないことを現場の生の声として聴き、その課題を痛感しました。これを受け、経営計画の投資枠を改めて整理し、維持更新については減価償却の範囲内で機動的に対応できるようにしました。設備投資によってそこで働く人びとの負担を減らすことは、人材不足が進む国内の状況への対応としても欠かせないと考えています。

サステナビリティを経営の中核に据え、持続的な企業価値向上へ

代表取締役社長 グループCEO 髙島 悟

環境への取り組みは、メーカーとして果たすべき当然の責任であると同時に、事業機会でもあるという考え方は一貫して変わりません。環境対応製品・技術へのニーズは高まり続けており、当社ではサステナビリティビジョンasv2050/2030のもと、サステナビリティ貢献製品の売上高比率を2030年度までに80%、2050年度までに100%とすることを掲げています。2025年度には、ライオン株式会社との協業により、リサイクル性を高めたサステナブルパッケージを市場化するといった進捗もありました。

足元では、反ESG・反SDGsといった揺り戻しも一部に見られますが、長期的には環境や社会を顧みない企業が選ばれることは決してありません。サステナビリティ教育を受けて育った若い世代ほど、この傾向は明らかです。私も、国内外の社員と対話するなか、「artienceに入社した理由は、環境に配慮した経営や製品開発に魅力を感じたから」という声を繰り返し聞いてきました。今後、こうした世代が社会の中心となることを踏まえても、サステナビリティ経営は不可欠であると認識しています。

さらに、持続的な企業価値向上に向けて、ガバナンスの強化も欠かせません。2025年度は企業経営の経験を持つ女性社外取締役を迎え、経営および財務・会計分野の知見を一層強化しました。取締役会の構成については、多様性と専門性の両面からスキルマトリックスを充実させ、経営による監督機能を高めていきます。

次期経営陣の選定に向けたサクセッションプランについても、指名・報酬に関する諮問委員会において継続的に議論しています。候補人材は一定の絞り込みを行ったうえで、委員会の場でプレゼンテーションの機会を設けるなど、適性を多面的に確認していく方針です。

130年の歴史を礎に未来への挑戦を続ける

artienceグループは、2026年に創業130周年を迎えました。この長い歴史自体がサステナビリティの証である一方、今私たちが取り組んでいるのは、老舗企業が自ら殻を打ち破る挑戦でもあります。

2024年度に社名を変え、理念体系を刷新し、「感性に響く価値を創りだし、心豊かな未来に挑む」というBrand Promiseを掲げてから3年目。変革は着実に進展しており、挑戦する風土や文化の醸成、事業ポートフォリオの転換といった「プロセス」においては確かな手応えを感じています。
しかし、「結果」という点ではまだ道半ばです。中期経営計画で掲げた数値目標の達成、そしてPBR1倍超という市場からの評価を勝ち取らなければなりません。祖業である印刷インキ事業に留まらず、新たな領域においても世界に認められる主力商品を育て上げる。それが実現したとき、初めて真に「変わった」と言えるのだと考えています。
先日、社内での対話の場で印象的な出来事がありました。ある若手社員が「社名をartienceに変えていただき、本当にありがとうございました。この会社で、何にでも挑戦していいと言われたように感じました」と直接伝えてくれたのです。私たちが目指してきた方向性が現場にもしっかりと伝わっていることを実感し、大変勇気づけられました。

私たちは130年の歴史を背負いながら、人の感性や心に寄り添う「art」と、技術力や機能性といった「science」を融合し、「感性に響く価値」を生み出し続ける企業として、未来への挑戦を続けていきます。

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経営計画artience2027/2030“GROWTH”