中期経営計画artience2027|統合レポート2026 経営戦略:成長分野への投資を強め事業ポートフォリオの変革を完遂
2026年6月30日 公開
本ページはAIを用いて翻訳しています。
事業ポートフォリオマネジメントの進捗

濱田 弘之
中期経営計画artience2027の2年目となる2025年度は、市場環境が大きく変化するなかで、事業ポートフォリオマネジメントの再設計が求められる一年となりました。
1つ目の基本方針である「高収益既存事業群への変革」は好調に推移し、ポートフォリオの質的改善への確かな手ごたえを感じています。海外でのリキッドインキやディスプレイ用粘着剤などが大きく伸長し、営業利益208億円という最高益の更新に寄与しました。
一方、2つ目の基本方針「戦略的重点事業群の創出」では、成長の柱としていたリチウムイオン電池(LiB)用のCNT分散体で大幅な計画の遅れが生じました。自動車メーカーのEV投資の見直しが相次ぐなど、外部環境の変化による影響が大きいものです。これに伴い、当面稼働が見込めない北米の設備について大きな減損損失を計上することとなりました。
前提が変わった以上、戦略を冷静に見つめ直していくことは欠かせません。次の柱となるディスプレイや先端エレクトロニクス関連をいかに育てていくかに、成長の軸足を移し始めています。
2026年度はartience2027の仕上げの年ですが、高収益既存事業群について当初掲げていた140億円の営業利益目標を初年度で達成してしまったことから、現在は180億円に修正しています(2026年2月時点)。なお、全社営業利益の2026年度目標は230億円としています。現中期経営計画期間を通じて、攻めの方針のもと事業ポートフォリオの変革を追求し、成長分野への積極投資を続ける姿勢には何ら変わりはありません。
さらに、次期中期経営計画artience2030においても、そこに向けた種まきを進めており、着実な成長ストーリーを描いていきたいと考えています。

高収益既存事業群への変革
高収益既存事業群は、日本で業界トップクラスの競争力を持つ事業が多く、当社の収益の基盤となっています。「成長事業」「収益基盤事業」「構造改革・戦略再構築事業」の3つに分類し、それぞれの役割を明確にしています。
例えば、パッケージ関連事業セグメントを牽引するリキッドインキは、海外では成長事業、国内では収益基盤事業に分類されています。もともと日本で高い市場シェアを築いてきましたが、食品や日用品などのパッケージは最終的に消費者が手にするものであり、人口が頭打ちとなった市場では伸びが限定的となります。培ってきた技術や知見を武器に、人口ボーナスを期待できる海外で利益を拡大し、それを次の投資に再投入することで会社の成長を支えるのが成長事業の役割です。
当社はすでに、インド、東南アジア、中国、トルコなど24カ国で事業展開を進めています。広範な拠点ネットワークを持つことで、マーケットが移動しても柔軟に対応でき、お客様の海外進出に合わせて現地で新たなビジネスが生まれるケースも少なくありません。すでにグループ全体の利益の6割以上を海外で生み出しており、この傾向は今後ますます強まると考えています。
安定収益を生み出す国内の収益基盤事業も重要です。国内で磨いたノウハウこそが海外展開の源泉になるという認識を強め、2026年度には国内への投資も積極化させています。その一例が、パッケージ関連のインキ・材料を製造する埼玉製造所への40億円規模の設備投資です。効率化・省人化に加え、人手不足が深刻になるなかだからこそ労働環境の整備を重視し、「ここで働きたい」と思ってもらえるスマートファクトリーを実現します。
2025年度は、構造改革・戦略再構築事業においても、価格改定や高付加価値化が実を結び、顔料事業の収益性が大きく改善しました。オフセットインキも国内で黒字化を達成。市場縮小のなかでも利益を高めるという、構造改革の好事例となりました。
代表的な既存事業の分類と営業利益目標

戦略的重点事業群の創出
戦略的重点事業群は、将来の成長を担う新たな柱を育てる領域です。artience2027は世界的なEVシフトのなかでスタートし、当初はLiB用CNT分散体事業がポートフォリオ全体を大きく変える存在になると想定していました。しかし、米国の政権交代によるEV政策の変化やインフラ整備の遅れなどを受け、計画通りの立ち上がりには至っていません。
ただし、EV化の流れそのものが止まったわけではありません。対象となる市場や製品領域を拡げながら、EV市場再拡大のタイミングを確実に捉えるべく備えていきます。主力としてきた三元系の正極材向けに加え、LMFP電池や負極材向けの開発、全固体電池の研究も推進。さらに車載用途に留まらず、データセンターのバックアップ電源や民生機器など、幅広い用途展開を視野に入れています。
CNT分散体での遅れを補うもう一つの重点領域が、ディスプレイ・先端エレクトロニクス関連事業です。需要が堅調な光学用粘着剤については、中国・江門での設備投資により生産能力を強めています。この分野では、日本で開発した製品を中国で生産し、現地のお客様に納めるサイクルが確立されてきました。このように、東アジア域内での国境を越えた営業活動の連携や、拠点間の生産補完など、グローバルを前提としたビジネスモデルが定着してきています。
一方、カラーフィルタ材料は、中国・台湾が主な市場ですが、2025年度は中国勢との競争の影響を受けました。これに対応するため、中国の深圳市容大感光科技股份有限公司とのジョイントベンチャーを設立し、現地生産品の販売体制を整えました。
さらに、先端エレクトロニクス分野でも、スマートフォン部材やデータセンター用途など、成長市場に向けた材料開発を加速させています。
今後伸びるテーマを確実に捉えていくため、現在は20名余りのタスクフォースを編成し、私も定期的に参加しています。一部にはテストマーケットまで進んでいる案件もあり、次期中期経営計画に向けて強化していく方針です。当社は、半導体向けポリマー樹脂などのユニークな素材を持っています。それを「群開発」するという視点で、ニッチ市場を含めた複数の用途・分野へ拡げることで、新しい事業の芽を育てていきます。
代表的な既存事業の分類と営業利益目標

LiB用CNT分散体の拠点別概況(2026年3月)
|
欧州 |
|
|---|---|
|
米国 |
|
|
中国 |
|
|
日本 |
|
経営基盤の変革
既存事業の「稼ぐ力」を底上げする一方で、新しい事業を育てる。その両輪を支えるのが、3つ目の基本方針である「経営基盤の変革」です。
例えば、当社の売上の6割以上を占める原材料について、グループ全体での共同購買を加速させています。シンガポールの拠点を中心に各地域の需要を取りまとめ、より有利な条件で調達できる体制を整えました。こうした取り組みは購買部門だけでなく、技術部門や製造部門の協力も欠かせません。
DXもマテリアリティで取り上げている重要なテーマです。生成AIの活用を積極的に進め、社内のクローズドな環境で利用できる仕組みを構築しており、技術情報の共有や分析、特許調査などに役立てていきます。
そして、すべての取り組みを実行するのは人にほかなりません。「挑戦する姿勢を評価する」ための評価制度の見直しや、社長と社員との直接対話などを通じて、モチベーション向上を図っています。
特に、グループ約8,000名の社員のうち約5,000名が海外で働いている今、海外人材の強化は極めて重要です。2025年度には海外の中堅マネージャーを日本に招いた研修を実施しました。今後も継続して、artienceグループへの理解やエンゲージメントを深める施策を行っていきます。また今回、埼玉製造所で進める効率化と働きやすさ向上のための投資は、そこで得たノウハウを海外拠点にも水平展開していくことを見据えています。
長期的なあるべき姿に向けて
次期中期経営計画に向けた成長ストーリーの根幹は、確固たる基盤となった既存事業のうえに、戦略的重点事業によるアドオンをいかに育てていくかに尽きます。ROE10%以上という次期中期経営計画での目標は、これまでの延長線上ではない挑戦が必要です。現場の努力だけに頼るのではなく、ときには思い切った経営判断や戦略的投資を断行し、一段上のステージに到達したいと考えています。
もう一つ重視しているのが組織風土です。当社は「人間尊重の経営」を理念として掲げており人に優しい社風があります。この良さを活かしつつ、社員一人ひとりが自らの役割を認識して自律的に動き、グループ全体が有機的につながっていく姿が理想です。変化の激しい時代を勝ち抜くためには、社内のあちこちで活発な議論が行われてほしいと思います。立場に関係なくフラットに意見をぶつけ合い、納得したうえで物事を進めていくことが大切です。
社内の若手・中堅メンバーと話すと、それぞれが確固たる考えを持っており、当社には優秀な人材が揃っていることを改めて実感します。彼らが存分に力を発揮できる組織を整えることこそが経営陣の重要な役割であり、それが次の10年を担う新しいartienceを創り上げると確信しています。