ビジネス編#04 インテリアと色 その1

初対面の方に自己紹介で色の仕事をしていますと言うと、今年は何色が流行りますか?という質問をよく受けます。たぶん、それは衣料品の色のことをおっしゃっているのだろうと推察してお答えしますが、実はインテリアにも流行色に近い概念があります。洋服ほどトレンドカラーを気にしなくていい分野ですが、長いスパンで見ると確実に色は変化しています。今回は、インテリア空間での色の掴み方について、まとめてみたいと思います。

インテリア慣用色

住宅のインテリア空間で実際に使われている色を考えてみてください。派手な色は少なく、地味な色が圧倒的に多いはずです。

図1 インテリア慣用色

図1 インテリア慣用色

この図は、NCDのNUE&TONEシステム(マンセル体系に基づいた色のものさしで、詳しくは基礎編第2回のカラーシステムを参照)の上に、最近のインテリアで慣用的に使われている色を載せてパターンを見たものです。具体的には、フローリング、カーペット、壁紙、カーテンの床、壁の大面積を占める4品目です。これを見ると、色相はYR~Y(黄赤、黄)のボリュームが大きいことがわかります。洋服では、デニムやスーツの紺などブルー系のバリエーションがもっと多いのですが、インテリアでは圧倒的に暖色系のウエイトが高いのです。それは、インテリア空間にはやすらぎや癒しが求められることが大きな要因だと思いますが、このボリュームゾーンにほぼ木の色がすっぽり入ります。インテリア空間は、木の色に合う色で全体が構成されていると言ってもよいのです。また、はでなトーンにはほとんど出現が見られず、じみなトーンに圧倒的にボリュームがあり、後は、あかるいトーンとくらいトーンの一部に出現しています。

図2 アイテム別ボリュームトーン

図2 アイテム別ボリュームトーン

わかりやすいように、図2でアイテム別にどのトーンに出現のボリュームが大きいのかを確認していただくと、壁紙、カーテン、カーペットとフローリングの順番に明るい方から暗い方向にボリュームが移っていることがおわかりになると思います。一般的によく言われる、天井は明るく、床は暗くというセオリー通りになっていますね。

7つのインテリア基本色

インテリア慣用色の中でも、出現頻度の高い色をインテリア基本色といい、具体的には白、アイボリー、ベージュ、ライトブラウン、ダークブラウン、グレー、黒の7色です。色名を聞くと、びっくりするくらい平凡で地味な印象を受けると思われますが、実は、インテリアの色はその狭い範囲の中での微妙な色の違いがとても重要なのです。そして、一見同じような色の中で、色相、明度、彩度のわずかな差がトレンドと大きく関係してきます。
この中では、白、アイボリー、黒はクリアな色で清色といいますが、黒は重い色なので、アクセント的な使い方に限定されます。一方、ベージュ、ライトブラウン、ダークブラウン、グレーは濁りみのある穏やかな色で濁色といいます。
今回は、この7つの基本色の中から、似て非なる色、白とアイボリーの違いに注目したいと思います。

白の違いはテイストの違い

白の中でも純白と言われる真っ白は、明度9.5で彩度が全くない色なので、ガラスやステンレスなどの冷たく光沢のある素材とよくマッチし、スタイリッシュでモダンな印象となります。一方、アイボリーは象の牙に由来する色名なので、黄味を含んだ暖かみのある色です。色相は2.5Yを中心に、明度は9程度、彩度は1.5程度でしょうか。黄味がわずかに入っているため、木、籐、コルクなどの自然素材とマッチしますので、ナチュラルな印象となります。

写真1 #NW1 ホワイト

写真1 #NW1 ホワイト

写真2 #SC1 パステルアイボリー

写真2 #SC1 パステルアイボリー

写真1&2はTOTOの衛生陶器。「青みの強いホワイトは、ガラスやメタルなど無機的な素材にマッチします。」「黄味の強いパステルアイボリーは、漆喰やタイル、木質素材など暖かみのある素材にマッチします。」というように、2種類の色の使い分けが明確に示されています。

インテリアの方向性を見ていくときに、この2色の変化に注目しています。大まかな変遷をお話しすると、90年代は明るいフローリングを使ったナチュラルなインテリアがほとんどでしたので、黄味の強い今ではクリーム色と感じされるようなアイボリーが使われていました。2000年代に入るとシンプルモダン化が始まり、今から10年ほど前、それがピークになった時には、壁紙、キッチンの扉材、収納面材などでは、純白が多く使われました。それに合わせて、冷蔵庫やエアコンの白も一斉に真っ白になりました。2000年代中盤以降、再びナチュラルテイストの揺り戻しが起こると、再び純白ではなく黄味が入った優しい白が多く使われるようになりました。ただし、90年代の彩度の高いアイボリーではなく、わずかに黄味を感じるオフホワイト調へと、その主流が変化したのです。このように、白の方向性を見ていくと、モダン化、ナチュラル化の方向性がつかめるというわけです。

写真3 現在の木質を生かしたナチュラルな空間には、純白ではなく、彩度は低いがわすかに黄味を感じるオフホワイトが使われています。積水ハウスホームページより。

写真3 現在の木質を生かしたナチュラルな空間には、純白ではなく、彩度は低いがわすかに黄味を感じるオフホワイトが使われています。積水ハウスホームページより。

実際の空間づくりでも、トイレの衛生陶器の色を決める際や、ドレープの内側で使うレースのカーテンの色を決める時も、その白を吟味して使って欲しいと思います。色名では白と同じように言われる色でも、その微妙な差をコーディネートに活かすことが大切です。

2015年07月07日

Text by 日本カラーデザイン研究所