生物多様性
基本的な考え方
artienceグループの事業活動は自然由来の原料や水資源など多くの自然資本に依存し成り立っています。そのため、生物多様性の重要性を早くから認識し、「生物多様性に関する方針」(2009年5月制定、2024年1月改定)を定めて生物多様性の保全を含めた自然保護活動、地域での植林活動や河川・湖沼の清掃活動などを推進してきました。
また、事業活動が生物多様性に与える影響を把握しその影響を軽減すべく、資源の持続可能な利用や、化学物質の排出削減、サステナビリティ貢献製品の提供を通じて生物多様性の保全に取り組んでいます。
artienceグループ(以下、「当社グループ」という)は、社会と地球環境の持続可能性向上に貢献し企業グループとしての持続的成長を目指すための中長期目標であるサステナビリティビジョン「asv2050/2030」の実現に向けて、当社グループの事業活動が影響を及ぼしうる生物多様性の保全に積極的に取り組むことを、重要な経営課題の一つとして位置付け、生物多様性の損失を阻止し、かつ、回復させることを目指します。
- 調達、資源保護
当社グループは、原材料や資材、エネルギーなどの調達に際して生物多様性に配慮するとともに、サプライヤーの選定においても生物多様性への取り組みを考慮します。また、生物資源の持続可能な利用に努めます。 - 製品、生産活動
当社グループは、持続可能な社会を実現させる「サステナビリティ貢献製品・サービス」の開発に努め、これらの提供・普及を通じて生物多様性の保全に貢献します。また、モノづくりにおけるCO2をはじめGHG(温室効果ガス)の排出や廃棄物の発生の削減に努めます。 - 水への取り組み
当社グループは、生産プロセス改革や工程水の循環活用など水資源の適切な使用に取り組むとともに、事業を展開する地域の水質の維持・保全のためのモニタリングや取り組みを積極的に推進します。 - 大気への取り組み
当社グループは、モノづくりにおけるVOC(揮発性化学物質)排出抑制に向けた取り組みを積極的に推進し、生物多様性への影響の最小化に努めます。この取り組みは、製品の生産工程だけでなく、お客様による使用時なども対象範囲としています。 - 地域との連携
当社グループは、国内外の事業所において地域に密着した生物多様性の保全活動を、行政や各種団体と協力して実施・支援します。また、取り組みの結果について公表し、社会とのコミュニケーションに努めます。 - 啓発・教育
当社グループは、社内において生物多様性に対する意識や知見を高め、経営戦略や事業戦略を含む企業活動全般に生物多様性の保全の取り組みの導入を推進するため、当社グループの役員、顧問および社員を対象とした適切な啓発・教育活動を行います。
2009年5月 制定
2024年1月1日 改定(2023年12月8日取締役会にて決議)
推進体制
環境マネジメント体制の中で取り組みを進めています。
TNFDフレームワークに基づくLEAPアプローチの実施
生物多様性の保全活動を推進していくにあたり、当社グループの自然資本への依存とインパクト、リスクと機会を把握し戦略を策定するためにTNFDフレームワークで示されたLEAPアプローチを実施しました。当社グループの全事業を対象とし、今回は直接操業を対象範囲として評価しました。
自然への依存とインパクトの把握
生物多様性に関する管理評価ツール「ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure)」を用いて、「総合化学」及び「特殊化学品」の産業サブグループで、当社グループの自然への依存度と影響を評価しました。その結果、自然資産への依存度は概ね低かったものの、「水の使用」「陸域生態系の利用」「GHG排出」「GHG以外の大気汚染物質」「水質汚濁物質」「土壌汚染物質」「固体廃棄物」が自然への影響度が高いことが示されました。
| 自然に影響を与える要因 | セクター:素材 産業サブグループ:総合化学 |
セクター:素材 産業サブグループ:特殊化学品 |
|---|---|---|
| 水の使用 | 非常に高い | 高い |
| 陸域生態系の利用 | 高い | 高い |
| GHG排出 | - | 高い |
| GHG以外の大気汚染物質 | 中程度 | 高い |
| 水質汚濁物質 | 高い | 高い |
| 土壌汚染物質 | 高い | 高い |
| 固体廃棄物 | - | 高い |
リスクと機会
当社グループでは、原材料調達から廃棄・リサイクルに至る事業活動のライフサイクルにおいて、どのような自然との接点(INPUT、OUTPUT)があり、それが生物多様性の「生息・生育環境の劣化」「里地里山の原料」「外来種の侵入」「化学物質によるばく露」「地球温暖化・気候変動」といった項目に影響を与えているかをまとめ、生物多様性へのリスクを明確にしました。
当社の事業活動と生物多様性との関係性(リスクと機会)を分析した結果、リスクとしては「土地利用」「大気への排出」「水域への排出」「廃棄物」などが生物多様性にさまざまな影響を与えていると考えられます。
機会については、asv2050/2030において2030年でサステナビリティ貢献製品の売上高比率80%およびライフサイクル視点でCO2排出削減に貢献できる製品の拡大、2050年ですべての製品をサステナビリティ貢献製品にすることを目標に定めており、将来需要が高まると予測される製品の拡大を進めています。
また、自然環境はロケーションによって大きく異なり、単一の指標では測ることができないため、TNFDでは地域特性を重視した情報開示が推奨されています。
当社グループでは、国内外の44事業所の評価を行い、優先地域を特定しました。今後は地域に合わせたリスク管理を行っていきます。
| 評価項目 | 評価ツール | 評価指標 |
|---|---|---|
| 生物多様性の重要性 | WWF Biodiversity Risk Filter | Scape Physical Risk |
| 水ストレス | Aqueduct Water Risk Atlas 4.0 | Baseline water stress |
| 重大な潜在的依存関係や影響 | ENCORE Hotspots Terrestrial | Combined hotspots of natural capital depletion |
| 生物多様性の重要性 | 水ストレス | 重大な潜在的依存関係や影響 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 高い | 著しく高い | 高い | 著しく高い | 高い | 著しく高い | |
| 日本 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| アジア(日本を除く) | 5 | 0 | 4 | 5 | 3 | 0 |
| 欧州 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 |
| 北米・中南米 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 |
戦略
当社では特に水環境に関して中国1拠点とタイ、インド、ヨーロッパ2拠点が「著しくリスクが高い」と評価されたため、事業継続において水リスクを重要リスクと捉え、該当する事業所の水リスクへの対応を図っていきます。
また、asv2050/2030の目標である2030年でサステナビリティ貢献製品の売上高比率80%およびライフサイクル視点でCO2排出削減に貢献できる製品の拡大に取り組むなかで、地球環境問題の課題解決に貢献できる製品・サービスの提供を推進していきます。
指標と目標
IUCNの「企業の生物多様性パフォーマンスの計画策定及びモニタリングのためのガイドライン」における中核指標の考え方や、「事業活動と生物多様性との関連(リスク・機会)」の結果に基づき、これまで環境負荷低減のために取り組んできた活動目標・KPIを、生物多様性の管理指標として推移を把握、管理しています。
| 生物多様性指標 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
|---|---|---|---|
| 水使用量(千m3) | 4,857 | 4,252 | 3,964 |
| Scope1+2(グローバル)(t-CO2) | - | 154,568 | 152,002 |
| エネルギー原単位(海外)(L/t) | 164.1 | 156.5 | 157.5 |
| VOC排出量(国内)(t) | 53.3 | 52.7 | 54.5 |
| 窒素酸化物(NOx)排出量(t) | 94.9 | 67.1 | 65.7 |
| 硫黄酸化物(SOx)排出量(t) | 13.2 | 14.8 | 17.0 |
| ばいじん排出量(t) | 10.3 | 9.4 | 10. 1 |
| COD排出量(t) | 224.5 | 159.0 | 159.6 |
実績
生物多様性に関連した団体への参画
- 経団連生物多様性イニシアチブ
- CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)
- 生物多様性のための30by30アライアンス
- 簡易モニタリングの実証試験を実施
主な生物多様性の保全活動
- 社有林の生態系調査と貴重な種の保存活動
(トーヨーケム(株)川越製造所) - びわ湖の日の環境美化活動
(東洋ビジュアルソリューションズ(株)守山製造所) - 緑化優良工場等表彰において、「近畿経済産業局長奨励賞」を受賞
生物多様性イベント「生き物語」を実施
artienceグループ(国内)で働くすべての人を対象に、身近な生き物を観察して報告してもらう生物多様性イベント「生き物語」を開催しました。夏休み中の子どもと家族で参加できるように期間は2024年8~9月とし、自宅周辺や旅行先で見つけた生き物(魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、昆虫類、その他節足動物、軟体動物)の写真と生息地情報を募集し、60件の報告がありました。報告の中に絶滅危惧種など希少な生き物は確認されませんでしたが、身近な場所での生物多様性に意識を向ける機会となりました。

報告があった生き物の写真

